ソニー TR-88の修理



キャビネットから 本体部分を抜き出しました、復元できるよう 写真を撮影しておきます。
なお 当時のソニーのラジオはアマチュアーの手作りかと思うような奇抜な設計になっています。
保守のし易さなどはまったく無視されています、製品さえ設計どおりに動作すればOKと言うのが思想です。

実は組み立てる時 元に戻すのに数日かかりました、信じがたいような話です。
2回目からは数分の1になるでしょうが・・・ 安易に分解しないように。
特に指針の取り付けに苦労しました。




音量が小さくシャリシャリした感じなので 結合コンデンサーの容量減少を疑い
外付けで 10μFのコンデンサーを追加してみました。
ただ効果は 比較的軽微でした。
(VRの近くに見える赤いCはスペーサーとして利用)



Cを外してみると 容量は30から50%残っているが損失値が大きくなっているので全数交換を決意。
幸い ケミコンは当時に比べ 大幅に小さくなっているので 便利でした。
ただ最も大きな6V100μFのコンデンサーは 組み込み方が特殊なので 
逆に同じ方法だと 見栄えが悪くなります、基板の見えない内側に6.3V330μFのものを組み込みました。

これで完成したのが 下側の画像です。






これで 正常に動作します。
ただ問題は IF調整が 難しいのです。
IFTの溝が 欠損していて回せません。
さらにねじ回しを近ずけると 影響があるのです。
プラスチックの板の下側に小さなコアが接着されているらしい
それとOSCのコアも固着して回せません、MWはスタート位置が調整できません。。

ある程度調整して 組み込むことにしたのですが、これからが大変でした。
先ず指針の取り付けです、いくら工夫しても駄目です。
色々考えて 何とか組み込めたのは1日後でした。





このラジオは落下させたのか 本体をキャビネットに固定するネジ止めのボスが破損している。
中央部分の裏蓋固定金具はネジ部分が破断して これは対策不可能 金具のみホットボンドで固定した。
エポキシ接着剤での固定も考えたが 金具を外す時には大変と考えで 接着力の弱いものにした。





ボスの補強や接着をして 固定箇所を増やしました。
ただ 組み込みのに このボスの補強 指針の組み込みを含め 延べ実質4日間かかりました。
最大の原因はイヤホーンジャックの不良です。
正常に動作しているのに 組み込むと無音になるのです。
取り外して 試験しても 原因がなかなかわかりません。
最終的に ジャックのところで+−の線がショートしていることが判明しました。
判ってみると単純ですが このような不良は初めての経験です。
キャビネットに組み込む時に ネジを締めますが 本体側を固定する時のやり方が ショートを引き起こしたようです。
悪いことに この機種は2個もついています。
それが順次 悪戯をするので 泣けてきます、どうも構造的な問題を抱えているようです。
(電気製品を半世紀以上使う方が悪いと言う見方もありますが 今後の注意点です)
無音になり調査する段階で 取り外すなどしたため 配線まで途中で断線するなど 散々でした。

大音量で 動作します、コンデンサーの交換だけの理由では無さそうで、
もしかしたらジャックの不良も重なっていた 可能性もあります。
(スピーカー配線の+−にリークがあった)

なおこのラジオもしかしたら電池ケース(白い円筒形の)がついていたのかも、
ラジオを動かすと電池がゆれて 無音になることがある。
電極の錆びは磨いたが 完全ではありません、注意しながらご利用ください。



今回 交換した部品




動作試験中(JOAK受信)のTR−88



最後に このラジオは昭和33年頃の製品です、最もソニーらしさが発揮された時代のものです。
後で修理することは ほとんど考慮されていません。
うかつに修理に挑戦すると 大変なことになります、ご注意ください。
無意味で無駄な時間がかかります、経験すれば次回は大丈夫ですが 初めてだと 
今回のように本当の修理の時間以外に数倍の手間がかかることがあります。




2022年1月4日

 


ソニー TR−88回路図(電波科学1958年9月号)









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