東芝トランジスターラジオ 8H-703Lの修理

凄く綺麗な東芝のトランジスターラジオが修理にやってきました。
このようなラジオは見たことが有りません。
止せば良いのについ修理を引き受けてしまいました。
どうも外観に惚れ込むのは悪い癖です。
残念ながら回路図もありません。


症状は持ち主によれば
バンド切替を繰り返している途中で突然ボボボ・・・という大きな発信音と共に
今まで受信できていたMWが受信できなくなりました.(SWも同様)
現時点では上記発信音もしなくなり「ザー」という雑音のみです。






回路図も有りませんので、全体の写真を撮って復元に備えます。
先ず低周波部分の基板の修理です。

パターンと部品からメモ帳にパターン図を作る事にしました。
初期のトランジスターラジオなので、トランスがリード線方式です。
これは接続を確認するのが、意外と厭らしいです。




ラジオ内部の様子。
左が低周波部。
中央下がIF部、その上スイッチ。
右側は周波数変換部。
全てラジオの中と逆置きです。
(バーアンテナが上に来る)




IF部分。
何故かやたら穴のあいた基板。
この基板に使われているケミコンも交換しました。
これで動作するようになったので、ラジオを組み込みました。


組み込んで動作させると大きな音で動作します。
これで修理完了と思いきや、なんとなく動作がおかしいです。
「ぶつぶつ」と言う音がかすかに聞こえます、しかも突然大きな雑音が出るようになりました。
スイッチをON OFFすると正常になったり、ならなかったり不安定です。
仕方なくまた分解です。
今度は時間をかけて確認する事にしました。

オシロスコープで確認すると、IFは正常に動作しているようです。
2現象で確認したわけですが、低周波段のみに雑音が出ます。

低周波基板を取り出してじっくり観察することにしました。
この回路はトランジスター4個が使われています。
出力はPPですから、3段増幅です。
格段のTRの入力と出力側にオシロスコープをつなぎ観察しました。
無音に近い状態ですと、雑音は発生しません。
ある程度入力が入った状態でおかしくなります。



入力信号はTRラジオのSP端子を8Ωで終端して取り出しました。
(これは出力電圧が大きくて、具合はよくありません、もう少し工夫が必要です)





悪戦苦闘の結果、初段のTRが悪いことがわかりました。
これを交換して修理は完了。

MWとSWの目盛り合わせとトラッキング調整をして、修理は終わりました。

なおPU端子は接触不良になりやすいので、今回はパスさせておきました。
さらにバンド切替SWは接触不良が相当酷いのですが、
修理は出来ませんでした。



2003年1月20日


  

8H-703Rの修理(2017年12月31日)

この機種の修理が2台めであることに全く気がつかず、
ラジオ工房掲示板に質問したところ我が家のホームページに記載ありと指摘され驚愕。

まず 分解に苦労しました。
あちこちにネジがあり、どのネジを外すかがよくわからないのです。
それと 部品配置の関係で 電池BOX やジャック類まで外さないと分解できない構造です。



これは予想していたことですが、組み立てるときに随分苦労しました。
組み立てに半日くらいかかるのです、前回のときは記載が無いので、あるいは衰えてきたのかもしれません。
数種類のネジが使われているので、外すとき位置を記載して保管したほうが良いでしょう。

保守性は非常に悪いです。
動作からケミコンの不良が判りましたので 交換してゆくことにします。
基板は余裕のあるつくりなので、ある意味部品は外しやすいのですが、
基板そのものをどう保持して部品を外すか、工夫が必要です。



こちらの基板は方向性があり、半田こてを使う方向に工夫が必要です。




交換した部品



部品を交換、配線の途中断線もありましたので修復後のラジオシャーシ



これで調整して終了です。
ただSW1の目盛りがどうしても合いません。
OSC(コイル)がどうも壊れているようです、特にコアの状態がおかしい。
MWも東京地区のNHK1 2 FEN TBS 日本放送 文化放送 JORFが正常に受信できます。

これで終わりとばかり ケースに入れました。
先ほども記載したように これが一筋縄ではいきません、半日くらいかかりました。

やれやれということで 改めて受信してみるとSW帯で雑音が出るのです。
どうもおかしいと再度調査すると 特定の位置でバリコンがショートしているのです。
MWでは放送の無い(日本放送とJORFの間くらいの位置)でSWの発振が止まるのです。

シャーシ部分を外して調査しているところ



上から見てショートしているところを探して バリコンの羽根を調整しなくてはいけません。
また取り外しです。
2度目ですから 時間は多少短くなります。
ただ電池BOXの半田付けやジャック類も外さないとシャーシ全体が取り外せない構造なのです。


外した状態でどの位置でショートしているかを慎重に調査します。
接触した部分を修正して行きます。
この修正作業そのものは2時間くらいで終わったのですが、再度調整をしなおして キャビネットに組み込みます。
取り外しから 組み込み終了まで なんと1日半ほどかかってしまいました。

蓑虫クリップはどこで接触しているか確認するための配線です。
勿論 発振回路の配線は外しておく必要があります。



バリコンのゴムが腐っているのを発見 ホットボンドで埋めました。



先日組み立てるのに苦労したので、キャビネットの前面パネルの写真を取りました。
受け側のネジ穴が 内側からのネジで固定される部分です。

特にスピーカーのネジの内 下側のネジ2本は外せない(外すと後で組み込めない)ので、
取り扱い(位置決めが難しい)要注意です。




ついでに内部から どの位置でネジ止めされているかの画像です。



組み立て後の8H−703R

Rの意味は良くわからないが、もしかしてキャビネットの色かも。
赤いというより 小豆色という感じだが、正解は不明。

ラジオ工房TRラジオ博物館1へ



2006年8月5日よりカウント

2017年12月31日:4,405

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