真空管ラジオの修理 日立 B−568型mT管トランスレススーパーの修理体験記

mT管トランスレスのラジオが修理にやってきました。
自分で修理に挑戦したそうです。
状況、 SWを入れ温まると猛烈なハム音が発生する。
手に入れてから、実用上はOKでしたが、無音時のハムが少し気になったので以下のように手を入れました。
@スピーカー、イヤホーン回路の配線をはずし、分解しやすいようにする。
Aシャーシ、真空管などを清掃。
BPLが切れていたので、6.3V豆球と交換する。(手に入れたときPLは切れていました)
C0.01(2個) 0.005(1個) 取り替える。
D40+40+20のブロックコンデンサーを交換する。
  (取付け方に無理がありスピカーと接触しそうですが) (ブロックコンデンサーのマイナスをシャーシアース側で切断する。)
以上の作業を終わりスピーカー、イヤホーン回路を接続し、音出しする。以前と変わらずに無音時ハムが少し気になり、修理前と変化なし。
我慢するかと、ケースへ取り付けし、SWを入れたところ、猛烈なハム音。

なかなか綺麗なラジオです。
昭和32年製だそうですが、12BE6 12BD6 12AV6 35C5 35W4と言う初期のmT管レスラジオの真空管構成です。



分解したところです。
通電してみると確かに猛烈なハムです。
原因はすぐわかりました。
ケミコンのアースのつけ方に不具合があります。
このラジオは初期のラジオですから、真面目にフローティングアース方式です。
写真をみても判りますが、ケミコンのアース線(赤)がシャーシに落ちています。
(写真上、やや右側のアースベロ  Eと表示部分)

他にアンテナコイル(1次側)のアース忘れ。
同じ場所近くで黒い線が切れているのがこれ。

フローティングアース回路に接続してハムの問題は解決?。
これでOKと動作させると、歪んだ音です。
まだ問題があります。


原因はイヤホーンジャックの配線が間違いでした。

白い線は出力トランスの2次側からきています。
一方 赤や黄 黒のビニール線はオリジナルの配線のようです。
当時はイヤホーンはクリスタル型で挿入箇所は 12AV6と35C5の間です。
白い線が追加されたようです、でも相当古いので昔々に接続されたのでしょう。



取り外しは大変なので、スピーカー側からの接続を切る事にしました。
これで正常に動作するようになりました。


後ろ側から見たところ。

IFの調整、目盛りあわせ、トラッキング調整をして終了です。
ラジオ日本(JORF 1422)が微かに受信できる程度でしたが、調整後は強力に受信できるようになりました。
なおツマミにが指針になっているので、キャビから出したり、入れたりして周波数を合わせる必要があり、
この構造上目盛り合わせに凄く苦労しました。
トラッキング調整はANT OSCの双方のコイルがコア入りのため簡単でした。


依頼主のキャビに入れる前「動作云々」は
恐らく切り離したケミコンに偶然接続されていたのではと推定しました。
この部分はビニールテープを貼って、接触しないようにしておきました。
ただ狭い場所に詰め込んだのは大変だったと思います。
見事に工夫されています。

本来は不要なケミコンを取り外して、ラグ端子を使い、
チューブラのケミコンを固定した方が安全なのですが、
依頼主の工夫の結果を残す事を優先しました。

なおこの故障(配線ミス)は意外と見つけ難いです。
数十台程度の修理経験者でも見つけるのに苦労するでしょう、これに懲りずに挑戦してください。


2003年10月4日
2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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