5球スーパーの修理で、今まである程度動作していたが、音がしなくなったとか、
ブーンとハムは聞こえるがどうしてもうまく受信できない場合の故障個所切り分けのヒントです。
mT管のトランスレスラジオの修理法については別項をご覧ください。
なおラジオを骨董市で買ってきて、いきなり電気を入れるのは止めましょう。
ケミコンのテスト
これはケミコンテスターで測定するのですが、無ければせめて外観テストをしてください。
端子の近くで液漏れしているもの、端子がリード線タイプのものは無条件で交換しましょう。
結合コンデンサー
出力管の結合コンデンサーがペーパーコンデンサーだったら、無条件にフイルムコンデンサーに交換してください。
スピーカーの確認
アウトプットトランスの1次側の抵抗をテスターのR×1かR×10で測り、クリック音が聞こえれば、まず合格です(音が歪むのはここではわかりません)。
導通が有るのに音がしないのは並列に入れられているコンデンサーのショートとSPの不良を疑って下さい。
ヒューズ
まれにヒューズが2本入れてあることがあります、99%間違いですから、1本にしましょう。
トランスつきのラジオは電圧の切替を兼ねたヒューズホルダーになっています。
100Vの位置に1Aのヒューズを入れてください。
(トランスレスの放送局型123号受信機のように2本使うのもあります)
ここまで確認できたら通電します。
ラジオの修理はアンテナ側から調べるのと、スピーカー側から調べる方法が有りますが、真空管ラジオの場合、後者の方が楽でしょう。
スピーカー→出力トランス、そして電源→電力増幅→低周波増幅→検波→中間周波増幅→周波数変換→アンテナコイル
と順次正常に動作しているか確認すれば良いわけです。
このために最低限テスターが必要です、デジタルテスターも使えますが、アナログテスターの方がお勧めです。
必要に応じTRラジオ(イヤホーン端子から音声信号を取り出すなど)やクリスタルイヤホーンが有ると便利です。
注意事項
@ 真空管ラジオは高電圧を扱います、感電の恐れがありますので、充分注意ください。
修理方法は参考例で、実施は自己責任でお願いします。
A 修復しても使われている部品は製造後半世紀以上経過し、安全性は必ず劣化しています。
コードをコセントからこまめに抜くなど、安全性には充分注意してください。
この回路図は昭和28年の「NHKラジオ受信機講座」のテキストを参考に、一部修正したものです。
ST管ラジオになっていますが、mT管のラジオでも基本的にはまったく同じです。
この場合 6W−C5は6BE6、6D6は6BA6 6BD6、6Z−DH3Aは6AV6、6Z−P1や42は6AR5、12Fは5M−K9に読み替えてください。
細かな規格の違いはラジオ工房の真空管をご覧ください。
各部分の確認方法
B電源回路の確認
整流管の直後(回路図の#A)はAC入力電圧に比べ、同じか多少高目のDC電圧が出ます。
これが極端に低いと整流管かケミコンの不良、それに他の回路で電流が流れ過ぎています。
高すぎる場合は電力増幅管などのエミ減(劣化)でB電流が減少しています。
さらにヒーター電圧が正常かも確認ください。
B電源の電圧はラジオの機種によって違いますので、図示の電圧はおおよその目安です。
mT管の5M−K9は12Fを傍熱管にし、性能を改良したもので、出力電圧はほの少し高くなるでしょう。
6X4は両波整流なので、トランスとの接続が少し違うが整流後の扱いは5M−K9に同じです。
電力増幅回路の確認
出力管のプレート電圧とスクリーングリッド(G2)の電圧を測定します。
プレート電圧は出力トランスの巻線抵抗による低下で回路図の#Aより少し低い電圧が測定できれば合格です。
スクリーングリッドは#Bと同じ電圧です。
次に出力管のカソード電圧を測って見ます、6ZーP1で10V、42(6AR5)で16Vくらい有りますか、
これより大幅に低いと真空管の劣化、高いとグリッドに+電圧がかかり、B電流が増加している可能性があります。
これは6Z−DH3A(6AV6)のプレートと出力管のG1の間の0.01μFの絶縁不良を疑ってみてください。
ST管ラジオでは90%以上の確率でこの不良があります。
なお出力管のG1の電圧測定はDC100Vレンジくらいで測定すると良いでしょう。
この結合コンデンサーに要求される絶縁抵抗が他の場所の物に比べ一段と厳しいからです。
6ZーP1のG1がプラスになる事は球の不良時でもおこります、でも比較的少ないです。
出力管を抜いて、この電圧が消えるようであれば、球の不良と判断します。
mT管の6AR5は42の兄弟でほぼ同じと考えてください。
低周波増幅回路の確認
6Z−DH3Aのグリッドを指で触って、ブーと音が出れば低周波段は働いているといえます。
厳密にはここに音声信号(TRラジオやCDプレーヤーから取り出すなど)を入れて確認すればさらに完全です。
別の確認方法としてアースと6Z−DH3Aのグリットの間にクリスタルイヤホーンを接続すれば、
高周波部分が正常に働いていれば音が出るし、ここでイヤホーンをたたけばマイクの代用になり、
低周波部分が正常ならスピーカーから音が出るので、切り分けに便利です。
音が出ない場合、6Z−DH3Aのプレートの電圧を測って下さい。
電圧が出なければ、負荷抵抗の断線の可能性が高いです。
普通は40〜100V程度です。
電圧が100Vを軽く超えるような場合は真空管の劣化か不良の可能性があります。
mT管の6AV6は6ZーDH3Aと同じと考えてください。
検波と中間周波増幅回路の確認
6D6 6WーC5のプレート電圧を測定してください、通常は160〜250Vあります。
電圧が出ない時は中間周波トランスの断線です。
さらに、ここでクリック音が出るか確認ください。
クリック音が出なければ、この回路以降が故障しています。
さらにスクリーングリッド電圧を測定してください、70V〜100V程度有ります
か、これが極端に高い(例えば130V)と、真空管が劣化している可能性があります。
6D6のカソード電圧を測り、3V近辺であれば、6D6はほぼ正常です(AVC電圧で変わります、無信号時)。
なお放送を受信した時はこの電圧が1V以下になることもありますが正常です。
電圧が出ない時は抵抗の断線か、コンデンサーの短絡です。
mT管の6BA6 6BD6は6D6を少し高性能にした真空管で、ほぼ同じように使えます。
周波数変換回路の確認
6WーC5が正常に発振しているかどうかは、G1の電圧を測定するなどでわかりますが、TRラジオでも簡単に確認できます。
5球スーパーの局部発振は受信周波数+455KHz(463もあり)で発振しています。
ダイアルを600KHz付近に合わせ、1055KHz付近で、局部発振の漏れ電波を受信できなければ、発振停止です。
電波は音声で変調されていませんので音は出ません、無音ですが、同調すると雑音が消えるので慣れれば簡単に確認出来ます。
念のためバリコンを少し動かして、この電波も同じように動くか確認すればさらに安心です。
mT管の6BE6は6WC5と同じと考えてください。
アンテナコイルの確認
アンテナをつないだ状態でアンテナコイルを手で触ったら、受信音が大きくなれば、アンテナコイルが断線している可能性があります。
特に端子とコイルのエナメル線の接続部分が良く断線しています。
1次 2次それぞれテスターで導通を確認するのも良い方法です。
ピーと発振してしまう場合
@シールドケースと真空管の肩の部分が密着してないと発振することがあります。
6D6の背丈が製造時期で違うことが原因です、隙間がある場合、シールドケースの長さを切り詰めるなど工夫が必要です。
Aアンテナコイルからアンテナ端子へのリード線が中間周波数トランス付近を経由すると、発振することがあります。
メーカー製では少ないですが、念のため離してみてください。
Bスピーカーの配線が高周波部分に近いと稀に発振することが有ります。
キャビネットに入れた時だけ発振するなどはこれを疑ってください。
C水洗便座から中間周波数と同じ妨害電波が出ていて、ラジオの発振と間違うことがあります。
疑わしい時は実験場所を変えて確認してみてください。
D6BE6 6BA6 6BD6などのmT管ソケットの中央シールドピンはアースしていないと発振します。
修理でソケットを交換した時は注意してください。
中間周波トランスの故障
中間周波トランスの故障も%のオーダーであります、コイルの断線やコンデンサーの劣化です。
断線はテスターで導通を調べれば簡単にわかりますが、劣化の判断は難しいです。
感度が極端に悪いなどの現象がおこりますので、交換してみるのが早いでしょう。
強い局を受信した時 音が歪む場合の確認
@AVC回路の0.1または0.05μFのコンデンサーが絶縁不良になると、AVCが効かなくなり、地元の強力な局を受信すると音が悪くなる事が有ります。
コンデンサーを交換しましょう。
AAVC回路の1Mオームは偶に断線していることがあります、不思議な現象がおこったときはテスターで確認してください。
受信できない周波数がある時の確認
バリコンの羽根の一部が変形しショートする事が結構あります。
受信周波数の一部で受信できない時は念のため、確認して下さい。
反対側から照明し、透かしてみながらバリコンを動かすと どこがショートしているか判りやすいです。
他にトラッキング調整の不良、IFTの調整不良も考えられますが、こちらは少ないでしょう。
ただし短波つきラジオの場合はこちらの原因の方が多いです、ご注意ください。
音量が調整できない時の確認
SW付VR(音量調整器)でラジオとPHONOを切り替える方式の場合、このSW部分が接触不良になっている事が非常に多いです。
この場合ラジオの音がVRで調整できない現象が起こります。
さらに6ZーDH3A(6AV6)のプレートに入れられている250PF(または100PF)がオープンになるとVRで音が絞り切れなくなることが有ります。
またVRの不良でも同じ事がおこります。
音が歪んで悪い時の確認
@出力トランスのインピーダンスが規格に比べ、大幅に低すぎる時は、音が歪みます。
音が悪い時はトランスのレヤーショートや接続ミスも疑ってください。
出力トランスに0 7K 12Kのタップ付きの物がありますが、7Kと12Kの間で5Kオームと誤解して接続すると間違いです、音が極端に悪くなります。
なお偶にスピーカー自体が不良のこともあります。
A非常に稀ですがAVC回路の故障により、高周波部分で音が歪むことがあります。
低周波部分でどうしても解決しない時はこちらも疑ってみてください。
ブーンと言うハム音が大きい場合。
@電源のケミコンの容量抜けが原因の事が多いです。
10ないし20マイクロファラッドを試しに追加してみてください。
軽減するようであれば交換します。
ただ整流管直後の容量(#A)は大きくしないでください、20マイクロファラッド程度で止めておく方が安全です。
抵抗を出た後の容量(#B)は大きくても大丈夫です。
Aケミコンは2〜4個を1つの金属ケースに収めたものが使われています。
偶に横リークと言ってケミコンの電極間で漏洩があります、摩訶不思議な現象を起こします。
どうしてもハム音が消えない場合は、ケミコン全部を交換したほうが早いです。
Bケミコンは最悪 爆発することがあります、漏洩電流が多いもの、外形が膨らんだものは危険です、交換しましょう。
感度が低いと嘆く前に
トランジスターラジオに親しんでいる人はアンテナに無関心と思いますが、真空管ラジオにはアンテナとアースが必要です。
例外を除きアンテナ線を接続しないと受信できません。
アンテナ端子に数mのビニール線を接続、屋外に出してみてください。
本当はアースも欲しいのですが、電灯線が代用してくれます。
トランジスターラジオでも受信が難しい電波の弱い地域の方は、正規のアンテナとアースを準備してください。
真空管の劣化
真空管の劣化や不良は当然おこります、真空管試験器があれば別ですが、別の真空管と差し替えてみるのが良いでしょう。
この為にも2〜3台同じ真空管を使ったラジオを入手しておくと便利です。
真空管の電圧を測定するとき、ピンそのもので測定してください。
ST管ではソケットと真空管のピンの間が接触不良の事が結構あります。
ソケットの端子での測定ではこの不良には気が付きにくいので充分注意ください。
調整
基本的にはこちらと同じです。
シャープ 5R−800の測定例。
電圧は20KΩ/Vのテスターで測定した値です。
2段表示
上段は比較的強力な局を受信中(マジックアイが閉じる程度)。
下段は離調中。
#Fの位置を直流100Vレンジで測定した時、少しでも針が振れればC7の0.01は交換が必要です。
6W−C5の第1グリッドに接続されているコイルが途中で切れているように見えるがこれは正しい。
このコイルは結合コンデンサーの役を果たしている。
通常ならL2のホットエンドとG1は50〜100PFで接続される。
メーカー製にはこのような使い方があるので覚えておくと役立ちます。
ラジオ工房掲示板にこの事例の質問がありました。 詳細はラジオ工房掲示板の記録をご覧ください。 ダイアトーンR型5球スーパーで各部分の電圧を測定したら 6K6-G2:166v,K:24v,6SK7-G2:166v,K:0vとのこと。 推定故障箇所は G2の電圧が相対的に低いのに、カソード電圧が高いのは出力管のG1に+電圧が加わった場合の特徴です。 コンデンサーの不良か真空管の不良のどちらかでしょう。 真空管を抜いてみて電圧が消えなければコンデンサー不良で、消えれば真空管の不良です。 なお6SK7のG2の電圧はB電圧から15Kオーム経由で供給されています、 166Vは異常な電圧で、配線ミスの可能性が高いです。 この部分は80〜100Vくらいが普通です。 |
不明な部分は遠慮なくラジオ工房掲示板にどうぞ。
真空管の名前、各部の電圧特に#A #B #D #E #I #Jが判れば、返事しやすいです。
なお事後の修理報告は必ずしていただくようお願います。
最近 聞きっぱなしの方が多く、気力が失せます。
2004年5月7日
2004年5月23日
2005年9月20日
2006年6月24日
2007年9月30日:8652
修理のノウハウや資料については下記の書籍をご覧ください。
ラジオ工房修理メモ
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