真空管ラジオの修理 東芝 513E 5球スーパーの修理

昭和28年ころ売られていた5球スーパーです。
出力管は42で整流管は12Fと言う比較的珍しい組み合わせのスーパーです。
小売価格13,400円。





修理前のシャーシ内部。
ペーパーコンデンサーのリークの他に音量調整用のVRが不良です。


つまみは特殊な形をしています。
6mmφのアルミ棒を加工して、延長軸を作りました。
VRそのものは500KΩ A型 SWつきです。
ただしこれは切替SWなので、現在入手できません(電源ON OFF用は入手可)。
手持ちのVR(新品)を利用することにしました。
この切替SW式にしておかないとPU(レコードプレーヤー)が使えないからです。


もう一つ なぜかUZのソケットが割れていました。
42用のソケットです。
これも手持ちのものに交換です、ネジは旧JISのマイナスネジを使います。



修理後の背面。


正面から見たところ。


シャーシ内部。
ペーパーコンデンサーは交換しました。
真空管は6D6を除いてマツダがついていました(当然ですが)。
6D6は駄目になったららしく無名メーカーの製品に交換されていたので、
新品のRCA 6D6に交換した。



調整 終了後試運転中の5球スーパー。

このラジオはどちらかと言うと普及型を狙った物と思われます。
東芝のラジオの特徴であるIFの6D6にカソードバイアスをかけない省資源型になっている。
このラジオのデザインが好きで、雑誌の取材用に最近整備した。

513E

依頼主からからの連絡では
一月ほど前にオークションでマツダ513Aを購入しました。
家に届いた日に一瞬は鳴りましたが、すぐに鳴らなくまりました。

ラジオが到着したので、早速調べてみました。
真空管は6WC5 6D6 6ZDH3A 42 80HKです(オリジナルは12F)。
すぐに鳴らなったとのことなので、アウトプットトランスを疑いました。
テスターで測定すと一瞬がりっと音がして、その後導通が無くなりました。
想像通りトランスの断線です。

ただこのラジオの出力トランスはとんでもない取り付け方がしてあるので、壊れると正直困るのです。
現物の修理をしたかたはご存知でしょうが、トランスがネジ止めでは無く、接着+カシメてあるのです。
何とか元通りの方法で、新しいトランスをつけようとしたのですが、無理でした。
止むを得ず、シャーシにネジ止めすることにしました。


シャーシ内部の写真。
内部に手を入れられた形跡はありません。





シャーシ上面。
トランスの上のヒューズホルダーが変です。


よく見ると85V端子にヒューズが入れられています。
それも5Aのものです、いやはや驚きました。
これではヒューズは働きません。
無知か、無責任かは判りませんが、困った事です。
危険極まりないです。



念のため6.3Vのヒーター電圧を測定してみると8Vあります。
勿論 無負荷状態ですから、実際はもう少し低いです。
計算上は18%UPの電圧が出ることになります。

ホルダーが壊れていますので、トランスの上部を分解し、85V端子に100Vを接続して、
残っている端子を100V用として利用いただくことにしました。
最近の電力事情では85V端子は不要です。



出力トランスは最終的にシャーシにネジ止めすることにしました。

古い−ネジ(旧JISネジ)で固定しました。
+ネジでも良いのですが、せっかくですから。


ほぼ同じと思われる514A型の回路図

513Aはパーマネントスピーカーを使う方式に変更されています。
他に音質調整用のVRが付いています。



このラジオ 感度が低いので、AVC電圧を測定してみました。
テスターはアンプつき入力抵抗12MΩのものです。
短いアンテナを接続、A点の電圧を測定してみると、−1.5Vです。
次にB点の電圧を測定してみました、ところが受信音が大きくなります、これは不思議な現象です。
普通はこの様なことはおこりません。
回路をしらべて見ると、検波段のIFTのアース側にバイパスコンデンサーがありません。
半田付けの跡を確認しましたが、取り外した形跡は発見できませんんでした。
念のため、上記514Aの回路図を調べてると、回路図上にも記載がありません。
浮遊容量で、動作しますので、回路図に無いから動作しないわけでは有りませんが、感度が悪いです。

勝手にこの部分に200PFのコンデンサーを追加してみました。
結果は受信音もおおきくなり、A点で−4VのAVC電圧が出るようになりました。
今まで気がつかなかったのですが、新製品時どうなっていたか興味のあるところです。

513Eの原型とみられる マツダ513の回路図です

この機種は昭和26年4月号の電波科学に紹介されています。
この当時はIFT2の2次線アース側に200PFが組み込まれていますが、513Dではこの200PFは無いようです。
何時から省略されたのかは不明。
シャーシの形式は513から513Fまで同じでキャビネットの外観が異なります。
ちなみに この機種は昭和28年頃に販売されていました。




ペーパーコンデンサーは全て新品に交換しました。
幸い VRは何とか使えそうなので、そのままとしました。






このラジオの真空管は6ZDH3Aのみエミ減で他の4本は大丈夫でした。
6ZDH3AはGMが正規の1/4くらいに劣化していますが、当分使えるでしょう。

このラジオは一応鳴るという事で購入したそうですが、早く出力トランスが断線してよかったです。
そのまま使っていると、真空管がボケてくるだけでなく、電源トランスが焼けかねません。
電源トランスが焼けると悲劇です。
ヒューズは正規(1A)のものを、100Vの位置に正しく入れて使いましょう。


2004年3月12日
2005年2月23日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転
2015年8月12日 表題を513Aと間違えていましたので 513Eへ訂正しました、それに伴い URLも変更します、513の回路図も追加。

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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