真空管ラジオの修理 卓上型電蓄の修理体験記

オークションで購入した電蓄が修理にやって来ました。
大きいのでシャーシと真空管だけ送ってもらったのですが。





これは完全な自作品です。
それも高周波増幅が付いています。
当時の最高級ラジオが付いていると思えば良いでしょう。
ただしこの修理は大変です。
なまじの経験では修理は困難です。
購入はお奨めできません。

理由
@製作当時から正常に動作していたか怪しい。
(音が出ていなかったという意味ではありません)
A回路図がまず無い。
B雑誌に掲載された回路の良いとこ取りで作られていることが多い。
C部品配置と配線から組み立てた人の回路図を推定できる経験が必要。
Dさらにその回路が妥当かどうかの判断が必要。




トランスの近くに見える豆電球はB電源のヒューズ兼用です。
これが上手く切れるとケミコンなどの保護になります。
でもこれは危険という雑誌記事もあります。
今回は元回路のままとしました。



黄色の水糸を使ってダイアルの糸かけがされています。
非常に器用に修理されています。



中央左に斜めに取り付けられているのは大型の出力トランス。
残念ながら断線しています。
この電蓄はオークションでラジオは鳴ると言って出品されていたそうですが、
どうも信じられません。
他に6ZDH3Aのプレート抵抗が断線。
オークション終了後2箇所故障するとは考えにくいです。
これでラジオが鳴れば、「電信柱に花が咲く」の類でしょう。

もう一つおまけに このラジオの出力トランスの接続が変です。
さらに調べるとこのトランスは7K:3.5K×2の出力トランスです。
何故このようなトランスが電蓄に使われているか疑問です。
不思議な回路部分
出力トランスに29年製造となっていますので、
恐らくその頃組み立てられたものでしょう。
ただ戦前のペーパーコンデンサーと思われるものも使われているので、
手持ちの部品を総動員して組み立てたと思われます。
(当時はこれが常識でしたから)


橙色の線が1次側、黄色が2次側のリード。
ところが2次側のリードがスピーカ端子に直接接続されていないのです。
10Kオームの可変抵抗経由で接続されています。
今まで多くのラジオを見てきましたが、こんなのは初めてです。

不思議なことにスピーカー端子が2組あります。
どうも2組のスピーカーの音量をVRで可変しようとしたかのような接続です。
そうであれば、42の出力電力に対しVRの大きさが小さすぎます。
また10Kオームは抵抗値が大きすぎます。
何を考えて製作したのか残念ながら推定できません。

この電蓄は元々電磁型のスピーカーが付いていた可能性があります。
電源トランスがAC360V×2となっています。
左端の大きな2KΩの抵抗がフイルドコイルの代り。
なおこのトランスはレギュレーションが余りよくないようです。



2組のスピーカー端子。
1つはACソケットを流用、
もう一つはターミナル。


整流管のプレートのすぐ近くをAC100Vの配線が通っています。
両プレート間にはPPで1000V(実効値720V)の電圧がかかっているので、
安全の為配線を離しておこなった。


修理完了したシャーシ内部。
出来るだけ元の製作者の設計思想を生かす形で復元した。
切替SWの代わりをしていたVRは音質調整用として利用してみた。
抵抗値が10KΩなので、プレート回路に入れたが、
可変範囲は狭い。
(遊ばしておくよりましと考えてください)

動作試験しても快適だったが、電蓄のキャビネットに組み込んだ時、
ハムが目立つと困るので、450V82μFのケミコンを追加した。
(2KΩから出たほう)
こうして置かないと試験用のスピーカーだと大丈夫だが、
低音の良く出る本物につないだ時に聞き苦しい。


注意
最近「大容量のケミコンを使う修理」をホームページ上で散見しますが、
平滑回路の入力(整流管のカソードやヒラメント)側に大容量のケミコンを入れてはいけません。
ハムは減るかもしれませんが、突入電流で整流管を痛めます。
特に12Fや80BK 80 24Z−K2などのST管は十分注意ください。
整流管の規格を調べて安全性に注意ください。
平滑回路の出力側には大丈夫です。
(他に入手できず、100μFなどをどうしても使う時は電流制限抵抗を入れてください)
これは基本的な知識です。




動作試験中のシャーシ部分。
IFTの調整。
ダイアルの目盛りあわせ。
トラッキング調整。
IFTの近くをアンテナリードが通っているので、
発振を心配したが、何とか大丈夫のようだ。
トラッキングも比較的簡単に取れた。
ペーパーコンデンサーは中古品を使ってあったので、
心配したが、IFT コイル バリコン 真空管など
1流品が使われているので、良かったのかもしれない。


2002年12月8日
2002年12月9日 08:56:07
2002年12月9日 21:45:06
2002年12月10日 8:21:50
2002年12月10日 20:35:15
2003年3月6日

2005年8月16日移転

2006年6月24日移転

修理のノウハウは「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」をご覧ください。




ラジオ工房修理メモ

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