真空管ラジオの修理 東芝 65C−35 (マツダ ラジオ)

製造時期は明確ではありませんが、昭和30〜31年頃の製品と推定されます。


修理完成し、受信試験中です。


かっこうAと紙が貼ってあります、銘板には記入がありません。
かっこうBは昭和31年末の卸商報に記載があります、
Aは現在見つかっていません。



型名は65C−35と読めるが、6SC−35の可能性もある。



キャビネットから取り出したところです。
ツマミを3個外し、底のネジを4個取り外せば、シャーシが取り出せます。
ただスピーカーの線は半田を外しておく必要があります。

製造後半世紀も経過しています、外観は奇麗ですが、よく見ると綿ぼこリがダイアルのプラスチックの部分についています。
ダイアル糸も断線しています。




背後から見た部分です。
音質調整用のペーパーコンデンサーはネズミに齧られた様になっています。





シャーシの裏側です。

試験をすると電源のブロック型ケミコンは大丈夫でしたが、
ペーパーコンデンサーは全て交換することにしました。
これはケミコンテスターでケミコンの試験をした時、
42のG1(コントロールグリッド)の電圧を測定してみたら+5V程度の電圧が出た為です。
リークが酷い事がわかりましたので、同種のコンデンサーは全て交換したほうが無難と判断しました。

アナログテスターテスターは入力抵抗が比較的低いですから(高級品で20KΩ/V)、
必ず100V以上のレンジで試験し、少しでも針が振れたら絶縁不良と判断してください。

デジタルテスターは入力抵抗が比較的高いので、この配慮は必要ありません。




音量調整用のVRが不良である事がわかりました。
このVRはスイッチ付で、ラジオとPU(レコードプレーヤー)の切替を兼ねています。
したがって1回路2接点のS付VRが必要です。
最近電源スイッチ用のON OFFタイプは比較的入手しやすいのですが、
取って置きのVRを使用することにしました。




ネジ止め式のツマミに場合は軸は長さを同じにすれば交換可能ですが、
差し込み式のツマミの場合、軸の長さだけでなく、形もオリジナルと同一にする必要があります。
この様な時は、軸をパイプで接続して利用する方法が便利です。
パイプは内径6mmφのアルミパイプを使ってください。
エポキシ接着剤で、接着すれば大丈夫です。

写真上 オリジナルのVR 軸を切断してあります。

写真下 交換用 軸の不足部分はオリジナルから切り出したものを利用する。








ダイアルの糸かけ。
ラジオの側面に「糸かけ図」が回路図と共に貼り付けて有りましたので、
図に従って、新しいダイアル糸で張り替えました。

ダイアル糸は専用のものを必ず使ってください。
代用品に黄色の水糸を使うこともありますが、軸が滑って使いにくいです。

なおダイアル糸を交換すると指針の位置も合わせる必要があります。
受信しながら、試行錯誤しながら最適な位置で固定します。


修理完了後のシャーシ内部。
なお この後、ACコードのごく一部にひび割れが見つかりました、危険なので新品に交換しました。




全て修理完了して動作試験をやっているところ。
6D6以外は代用の真空管を使います。
こうしておくと壊した時の被害が少なくてすみます。

なお調整時は実使用の真空管を必ず使用してください。

これは真空管の伝電極間の容量が微妙に違う為で、
現物を使わないと調整の意味がありません。



受信してみると周波数の一番低いところで、無音になります。
調べてみるとバリコンの羽根がゆがんでいます。
2連のうち、夫々 ほぼ同じ位置にキズがあります。

バリコンの上から、ものを落下させたのでしょうか、不思議なキズがありました。
ニッパーでキズの部分を整形してみました(写真は整形後)。
これで低い周波数も受信できるようになりました。
一応受信できるようになったら、IFの調整です。
アンテナ端子から455KHzに信号を入れ、マジックアイが最も閉じるようコアを廻します。
なおコアを回す時、閉じ方が富士山型に、ピークがあることを必ず確認してください。
慣れると、この感触で、IFTの不良が見つけられるようになります。
IFTに組み込まれたコンデンサーが不良になった場合、このピークが確認できません。

このラジオの発振コイルにはコア入りが使われています。
したがって周波数の低い方はコアを調整し、高い方はバリコンについているトリマであわせます。

目盛り合わせがすんだらトラッキング調整です、周波数の低い方はコイルを調整するのですが、このラジオのアンテナコイルは空芯です、
したがって最適に調整する事は出来ません。
調整棒のコア側を入れると感度が上がりますので、コイルの巻数が少ないようです。
幾らなんでもコイルヲ巻き足すわけには行かないので、バーアンテナの破片を入れてインダクタンスを増やす事にしました。




BCLラジオ用のコアを破片にします。


コイルの中に入れて調整、OKのところで仮止めします。


エポキシ接着剤で落ちないように固定して終了です。

周波数の高い方は、バリコン付属のトリマで最高感度にあわせます。
このラジオはマジックアイがついているので、比較的簡単です。




作成時期不明

2006年6月24日移転




ラジオ工房修理メモ


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