並3受信機の組み立て

並3受信機の組み立てです。
この受信機は本当の意味の並3で、整流管以外は3極管で構成されています。
同じような構成の製品はナナオラ30(B)型、などありますが、極めて稀な例です。
低周波トランスが必須であり、昭和13年頃には製造中止になっているようです。
感度が極端に悪いのが特徴で、アンテナも大きな物が必要です。
このように並3は増幅度が足りないので、段間の低周波トランスは1:6とか1:5の物が使われていました。
現在は1:3しか入手できませので、増幅度は多少落ちるでしょう。
5極管が普及してくると、57 47B 12Fなどの3ペン(3球ペントード受信機)に移行します。

ばざーらさんに、完成後ナス管に差替える事を前提に部品を集めて頂きました。
中学生の頃、同級生のラジオ少年とST管の高一ラジオを作成した時の懐かしさと言うかノスタルジックな気持ちから思い立っての話でした。
一番簡単な回路でとお願いし、古い実体配線図のコピーも付けて頂いたのですがチンプンカンプンで私の手に負える代物ではありませんでした。
シャーシも穴が空いておらず、真空管とトランスとバリコンの位置程度はおぼろに分かりますが、それ以外は。。。分かりません。
修理では無く、組み立ての依頼ですがお受け頂けますか?部品は配線用の線とか部品を止めるネジ以外は一通りそろってます。


真空管は56 12A 12Fの3球です。
典型的な並3です、感度が悪いので躊躇したのですが、
使い物にならなければ並四に改造する前提で組み立てることにしました。
56と12Aの間が開いているのは将来ここに56を移し、
検波管に57を使いたいと考えたからです。

真空管は試験したところ全てOKでした。
これに関しては販売店は良心的といえるでしょう。
ただ後で述べるようにミゼットバリコンは不良品で、使用するのに悩みました。

他に高周波チョークがありましたが、800KHz弱のところに自己共振周波数があるのと、
リード線の半田が上手くつかないので、使用するのはやめました。
使わなくても大丈夫です。


組み立てるシャーシは穴が開けてありませんので、
保護膜の上にマジックインクで印をつけて、ドリルで穴あけします。
この準備に組み立ての半分以上の時間が取られました。
出来たら 穴あきのシャーシを準備した方が無難です。


順次穴あけをしてゆきます。
多少曲がっていますが、ご容赦ください。


保護のビニール膜をはがす。


順次部品を組み込んでゆきます。


シャーシ内部の様子。


多くの部品にはばざーらと書いてありますので、
このミゼットコンデンサーも同社で購入したのでしょう。
手で回す程度では大丈夫なのですが、締め付けられませんでした。
ネジがばかになっているようです。

やむなく水道のシール剤をねじ山に巻き付けて、固定。
反対側は下の写真に示すように接着剤で固定しました。
販売店に悪気は無いと思いますが、
知らずに購入した方はとんだ災難です。


軸がネジで完全に固定できないので、接着剤で固定します。



これも購入した抵抗とケミコン。


こんな抵抗も・・。
これでも売り物になるのですね。


バリコンはmax365PFです、並四コイルはミズホ製です。
これを組み合わせると500KHz〜1800KHzが受信できます。
バリコンはアメリカ製らしく、インチサイズの軸ですから、
日本製の6mmの物より多少太いです。

バリコンを固定するためのネジも付属していません。
この種のバリコンを販売する時はネジも同時に供給しないと不便です。




動作試験中の並3受信機。

真空管は左から整流管12F  出力管12A 検波管56の順です。

感度は悪いです、都内で数mのアンテナをはれば受信できる程度です。
SSGで測定すると、300Ωの擬似アンテナ経由で、接続し、
50dB(約0.3mV)の信号を加え、最大音量に調整して、
スピーカーから信号がかすかに確認できる程度でした。
80dB(10mV)の電圧を加えれば、多少聞ける程度の音量になります。
電源スイッチは日本製と思ったのですが、
軸がインチサイズらしく、日本製のツマミは使えませんでした。

将来はナス管にしたいそうですが、
スピーカーがダイナミックでは多少場違いな感じはします。


シャーシ内部の配線です、並3ですから、単純です。
AC回路からシャーシに0.01μFで落としてあります。




並3受信機 参考資料(どの程度の感度か?)



この図は改定ラジオ技術教科書(昭和16年 日本放送協会)より。
東京近辺であれば、標準アンテナ(高さ8m 水平部12m)を使えば実用的に使用できます。
この当時の低周波トランスは、前述のごとく1:5程度を使用していますので、
増幅率は現在作れる物(現在入手できるのは1:3)に比べ高いでしょう。

ミズホの並4コイルに同封されていたトリオの説明書のうち、回路図部分。



今回使用しなかった部品。

4mHのRFCが付属していましたが、これは自己共振周波数が780KHz付近にあり、
うかつに使用するとトラブルの元になります。
実は大昔 同じようなものを分解した事があります。
細いエナメル線をガラ巻した構造で、製品の品質に問題があります。
このタイプのRFCは使わない方が無難です。

中古ラグ端子:中古品でもお金になることは理解できましたが、
今回は手持ちの新品を使用しました。

350V 22μFなぜか4個あり、2個だけ使いました。

2009年6月5日





   

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