電池管 2球スーパーの試作

真空管2本で、スーパーが出来ないか、それも出来るだけ安価に、という課題で製作しました。
検波も真空管でやることにこだわって、複合管を利用することにします。
昔から注目していた、5極 2極 3極の複合管である3A8-GTを使って組みたてることにしました。
日本ではこの真空管は馴染みがありません。その為比較的安価に購入できるところが魅力です。
1R5で周波数変換 3A8-GTで中間周波増幅、2極管検波 低周波増幅を行わせ、クリスタルイヤホーンを駆動する仕掛けです。
電源は電池使用とし、フィラメントのA電源は単3電池1本で、B電源は006P 5本で45Vとします。
ただ電池管はgmが低いので、あまり高感度は期待できません。
それでも都内で、JOAKからJORFまでの7局の放送が、バー・アンテナだけで受信できます。
バーアンテナをもう少し大型のものにすると、更に高感度になります。
いろいろ制約はありますが、2球でもスーパーが出来る証として組み立てました。
スピーカーを鳴らすには、もう1本真空管を追加してください。
この2球スーパーは写真で判るように、試作レベルです。改良の余地が沢山有ります。
皆さんも製作して、より良く仕上げていただくことを期待しています。
もし3A8-GTが入手できなければ、1R5 1T4 1S5の3球式で作ることも出来ます。

1R5 3A8GT

3A8-GTのフィラメントは1ピンをA−に、2ピンと7ピンを接続してA+に接続します。
1R5は1ピンがA−、7ピンがA+です。



1)回路図


梅田さんに回路図を描いていただきました。

2)組み立て方

小さなアルミ板に、真空管やIFTの取り付け穴を開けて、組み立てました。
このような方法で組み立てると、試作に便利です。また回路の変更が簡単に出来ます。
最終的には、お好みの方法で、組み立てなおすと良いでしょう。
小型に製作するため、真空管ラジオ用のIFTは1個しか使っていません。
検波段のIFTは、トランジスターラジオのIFTを流用し、455KHzの並列共振回路を構成、3A8-GTの5極管部プレート負荷としています。
大きさの制約が無ければ、この部分も、真空管用のIFTを使った方が良いでしょう。
理想的には、電池管用のIFTが欲しいところです。
発振コイルは、市販のNO88コイルをそのまま使います。
このコイルは、秋葉原や通販で容易に入手できます。

バリコンは、最大容量280PFのポリバリコンを使いました。
最初、親子バリコン(容量は親:max140PF 子:max85PF)で試作したのですが、浮遊容量の関係で、放送波帯をカバーすることが出来ませんでした。
最終的に、最大容量280PFのポリバリコンに変更しました。

アンテナコイルは、ラジカセのジャンク基板から流用しました。
コイルの巻数が多すぎるので、解いて利用しています。
手に入るものを、何でも利用することが、現在のラジオつくりの楽しみの一つです。
バーアンテナは、ラジオの性能を大きく左右します。大型のバーアンテナを利用すると、更に良い結果が生まれます。


左側の基板は中国製のラジカセのチューナー基板。

グリッドキャップ

3A8-GTの5極管部は、トップグリッドになっています。
グリッドキャップは、ST管のものより小型です。
ヒューズホルダーの金具を流用して作りました。
なおこの真空管にシールドケースは不要です。


完成した2球スーパー。

レフレックス式スーパーに比べ、回路は単純ですから、比較的簡単に組み立てられるでしょう。
電源はVRのスイッチを利用しています。試作品なので、A電源だけのON OFFです。
最終的にはAとB両方のON OFFができるスイッチを組み込んでください。

006P電池の途中に、豆ランプが入れてありますが、ヒューズ代用です。
そそつかしい筆者が、試作品にいれる安全装置です。完成後は省いてください。



3)調整方法

電池管スーパーは、AC式に比べ、相対的に感度が低いです。
調整を真面目にやらないと、正常に受信できません。
テスト・オシレーターで、455KHzのIF信号を発振させ、このラジオに加えます。
この時、400Hzや1000Hzなどで変調された信号を使ってください。
テスト・オシレーターの出力のリード線を、2球スーパーのバーアンテナに、接近させる事で結合します。
イヤホーンで聞こえる音が、最大になるよう、IFTのコアを調整します。

次にトランジスターラジオを隣において、局発の信号をモニターします。
周波数が直読できるBCLラジオが最適です、まず970KHz付近が受信できるよう設定します。
次に2球スーパーのバリコンを反時計回りに廻しきった位置で、局発信号が受信できるようNO88コイルのコアを調整します。
時計回りに廻しきった位置で、2100KHzを発振するよう、バリコン付属のトリマを調整します。
なお可変範囲が広すぎて、トリマだけでは調整できませんでした。
10PFの固定コンデンサーをパラにいれて、上記範囲に何とか収まりました。
この10PFは、回路図には書いてありませんので、注意してください。
ここまで調整すると、515〜1645KHzまで受信できる準備が出来たことになります。
周波数の範囲は、上記にこだわる必要はありません。もう少し広くても結構です。
この調整は、お互いに影響しあいますので、2〜3回繰り返すと更に良いでしょう。
言葉で書けば簡単ですが、これは意外と根気の要る作業になります。心して取り組んでください。
原因はNO88コイルは、幅広い応用に使われているため、このポリ・バリコンと組み合わせて使うように、事前には調整されていないということです。
したがって、この組み合わせで、単純に組み立てた場合の発振周波数は、不明ということです。順次希望の周波数に追い込んでゆく作業が必須です。

次にトラッキング調整です。
バーアンテナのコイルは、動かせるように作られています。位置を調整する事で、インダクタンスが可変できます。
まず、周波数の低い方の放送局、例えばJOAK(594KHz)を受信しながら、最大感度になるように、コイルを動かします。
次に、高い方のJORF(1422KHz)を受信しながら、最高感度になるように、バリコン付属のトリマを調整します。
書くと単純に思えますが、今回は、ジャンクのバーアンテナを流用したので、グリッド・ディップメーターで、おおよその同調点を捜すなど、手間がかかりました。
コイルも、半分くらいの巻き数にまで、減らしました。
ポリ・バリコンとバー・アンテナは、組になった物を使う方が楽です。

4)組み立てての反省事項

*クリスタル・イヤホーン用に作りましたが、セラミック・イヤホーンでも動作はします。
ただイヤホーン自体の静電容量が多いようで、回路的に工夫の余地がありそうです。

*ジャンクのバーアンテナ
もう少し工夫しても良かったと思います。
BCLラジオに使われているような大型のバーアンテナを組み込むべきでした。
スカイセンサー5800のバーアンテナを接続して実験してみました。
感度が格段とよくなりました、AVC電圧を測定してみるとほぼ倍の値になりました。

2008年12月24日
2008年12月28日:005




   

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