全く受信できないというS−38の修理です。
通電してみると 各部分の電圧はほぼ正常ですが、時々 かり かりという小さな音がします。
まず出力管のグリッドをアースしてみると 完全に無音になります。
という事は雑音はもう少し前の段から出ていることになります。
12SQ7のグリッドをアースすると雑音も出なくなるので、IF段までに出ているらしいと判断しました。
経験上 アメリカ製のラジオはIFTの不良が結構あるのです。
念のため IFTの端子にオシロスコープを接続してみると雑音が乗っています。
予想通り IFTの不良のようです。
ケースから出したところ
シャーシの上面からの画像
回路図です、詳細はネットにありますので探してください。
検波段のIFTを取り外したところ
下側のベース部分にコンデンサーが組み込まれています。
黒い矢印の部分がマイカ。
画像は上記(画像)と撮影方向が違います。
金属板(電極)でマイカを挟む構造です。
マイカの両面に 電極が作られている、
2分割されていてこれが2個のコンデンサーになる。
脚に接続された金属板でマイカを挟む方式。
非常に合理的に作られているが、長年の使用で 電極部分が悪戯を起こす。
多分電極に銀メッキが使われているのではと思われる。
黒い部分が銀マイグレーションと思われる部分で、この部分が不良の原因です。
アメリカ製品に時々ある現象で,経験がないと見つけるのが大変でしょう。
なお インダクタンスを測定してみると1,000μHと1,200μHでした。
マイカの形状に 大きさの違いがあるのはこの為かも知れません。
なお修理では共に100PFのコンデンサーを外つけして修理しました。
コアの移動で同調できましたので これで良しとします。
本来なら100と80PFのように違ったのかも知れません。
ケミコンの試験
製造当時のケミコンも残っているようなので、ハムは感じられないが 念のため漏洩電流を測定してみた。
100Vで使う場合のB電圧では漏洩電流は1mA程度で 問題ないことが判明した。
ただし115Vだと3mAくらいになるので、注意が必要だ。
(アメリカで使う場合 ケミコンは交換した方が無難です。)
しかし製造後60年以上たっているのにまだ使えるとは驚きです。
調整
この種のラジオは調整が命です。
マニュアルがNETにありますので ダウンロードして 調整します。
まずIFTの調整です。
これはアンテナ入力から455KHzをいれ、コアを調整します。
このIFTは上と下から それぞれ調整する方式なので 注意が必要です。
最初 上からのみ調整する方式だと思い込んでいたので、酷い目に逢いました。
(IFTの修理方法も違いますので注意してください)
次はMWの調整です。下側の周波数は画像のPのパディング(一見トリマに見えるが)であわせます。
上側の周波数はMであわせます、その後Nで最大感度に調整します。
次は普通の常識と違い周波数の一番高い方からあわせます。
30MHz部分です、FとGです。
次も表に従って調整します。
結構 乱暴な仕組みと思ったのですが、結果的にダイアル目盛りも実用的に問題ないくらいに合致します。
正直 これには驚きました。
調整のやり方の表
2018年11月27日