5800の修理 その2






非常に珍しい故障に遭遇(2018年5月23日)

5800の修理を終え、通電試験をしました。
すべて正常に受信するのですが、MW受信時 信号の無い周波数でもSメーターが4以下にならないのです。
当然 JOAK TBSなどの受信では普通に振れます。
SW FMも感度は悪くありません。

調べてみると電圧が通常より低いのです。
おかしいと調べてみると電流が小さな音でも150mAくらい流れています。
通常なら 40から50mA位のはずです。

まず出力段のTRを疑いました。
しかし 問題ありません。
電源からあちこちの部位に電源を供給していますので、方面別に切り分けて調べます。
ジャンパー線で配分されていることが多いので、
半田付け部を、自動半田吸いとり器で処理すれば比較的簡単に切り分けられます。
ところが どの部分を切り離しても電流が思ったほど減らないのです。

ところが出力トランジスターは切り分けのため 個別に切り離していましたが、改めて、
出力トランスの中点(電源の供給部分)の半田を外すと、電流が大幅に減少するのです。

いままでラジオ(真空管ラジオを含む)を4桁のオーダーで修理してましたが、初めての経験です。
非常に驚きました。
いままで経験したことの無い現象です。
取り外して 出力トランスの1次側と2次側の絶縁抵抗を測定すると、約25Ωくらいなのです。



良品の測定結果




出力トランスを組み込んで修理完了。



なお本件は 操作しても注意しないとまず気がつきません。
回路的にICのバイアスにも影響しますので、ICにも過大電流が流れます。
今回は無事でしたが、悪くするとIC(特注品で新品は入手不能)まで壊します。
特にアダプターで動作させている時は気がつきにくいです。



急にAMが受信できなくなった5800(2018年1月5日)


5800のブロック図は下記のようになっています。
FMは受信できるので、AM関連の不良です。
このような場合 一番怪しいのはQ4(良く壊れることで有名な2SC710が使われている)です。
まず このトランジスターを交換してみました。
これで正常に動作するようになりました。


ただ経験上 この機種の修理は標準的として9個のトランジスターを交換しています。
単純な修理でも、これで正常動作はするのですが(多少安価です)、不安は残ります。
依頼人に確認したところ標準修理を希望されたので 残りも壊れやすい部分を交換しました。
ここまで交換しておくと故障の確率は大幅に減少します。
(手持ちのTRが少なくなったので ここまでの交換は中止しています 2021年1月8日)

交換したトランジスター

Q4 5 6 8 9 10 11 13 14の合計9個です。
ここでQ13とQ14は安定化電源部分(REGと表示部分)。



なお電池の液漏れで電池のマイナス側バネが錆びていたので交換しました。
なお Sメーターのカバーが割れているのです、異常に気になるので交換を計画しました。
ただ5800用のケースは手持ちがありませんので、手持ちの5900のケースを何とか組み込むことにしました。



ケースの前面カバーが割れている(右側)、左側は補修後。
ただ同じ寸法ではありません、あちこち削り 何とか収めました。


















FM受信不良(2017年11月1日)


FM受信不良で修理して 数日して 再度再発したという珍しい故障です。 前回はFM AM切替のスイッチの接触不良でした。
一度取り外して 再度組み込みました。
上記画像はスイッチを取り外したところのものです。
メイン(画像では矢印の部分)スイッチとの連動レバーは取り外してあります。
FMに切り替えた時のみ このスイッチが動く(AMからFM状態に)仕掛けです。

返送してもらって 見てみると バンド切替スイッチがFMの位置まで動きません。

分解してみると メインのバンド切替SWがおかしいのです。
FMに切り替わるはずの領域までスイッチが動かないのです。



画像は別の5800ですが、同じ部分を撮影してあります。
連動レバーが左側に動くとFMに切り替わります。
レバーはメインのスイッチの 
下の画像「ここまで動く」と記載の部分に押される形でレバーが動きます。
途中で止まるとFM側に切り替わらないのです。




故障品と正常品の下側の画像です。
「ここまで動く」と記載した部分でレバーを押して AMFM 切替SWを動かす仕組みです。
途中までだとFMに切り替わらないのです。


故障の原因はギヤの破損でした。
金属ギヤとプラスチックギヤが噛み合う部分で、どうしてもプラスチックが欠けることがあるようです。
めったに壊れないのですが、100台に1台くらいの割合で経験します。
こうなると 移植して修理するしかありません。
半田付け箇所が多いので 取り外しは大変です。






メインのバンド切替SWを外したところ。
移植しますので 2台分のスイッチを取り外すことになります。
半田付け箇所が多いので注意が必要です。

当然ですが 壊さぬように外します。






不思議な故障(2017年3月6日)


無音になるという故障です、オークションで購入したそうですが、一度販売者に修理してもらったが再発したということで依頼されました。
綺麗に整備してある5800です、無音の原因はすぐに判ったのですが、Sメーターの振れがいやに弱いのです。
無音の原因は良く起きる単純な故障でした。
調べてみると MWとFMの調整が全くといっていいほどずれています。
MWで30KHzくらいずれていました、トラッキングも取れていないようで、Sメーターも2くらいしか振れません。
(工作室は鉄骨構造で電波が遮蔽されやすい)
下記は調整したところです。



無音対策をした後、悪名高いTRを交換しました。
販売者の方がすでに出力TRとIF段の3個を交換していたのですが、Sメーターの振れが弱いので、
再度 追加して交換済みの2個も再交換しました。

しかし何故調整していなかったのか不思議でした、SWは曲がりなりにも調整してあるのに?。
MWとFMは野放し状態でした。



キャビネットに収納しようとしたところ 裏側右下のボス(ねじ止め穴)が破損しています。



何とか修理しました。



ボスの破損の原因はねじでした。
出品者がクーガ2200用のねじを間違えて1本使ったことが原因です。



2200のネジは 少し 長いのです。
無理に締めるとボスを破損します。


バンド切り替えスイッチの破損(2016年5月8日)

バンド切り替えスイッチが動きません。
ツマミを回しても スライド部分が全く動かないのです。
今まで数え切れないくらい5800の修理をしましたが このような不思議な現象は初めてです。

早速基板から外してみました。

左側の物が 該当品です。
ツマミに連動する歯車があり スライドする部分に平型のギヤと咬み合って動く仕掛けのようです。
この平型のギヤ(黒いプラスチック製)が破損しているのです。



バンド切り替えスイッチを取り外したところ。
接点が沢山有るので 取り外しは大変です。



壊れたのが不思議で スイッチを分解しよとしましたが 大変で諦めました。
なお電池の液漏れ跡が凄かったです、もしかしたら この後遺症かも知れません。
電池の液漏れは十分注意する必要があります。




別の5800のバンド切り替えスイッチを組み込んで修理しました。
なお よく壊れるトランジスターも6個交換しました(予防保守)。
下記が画像は電池でFM(NHK)を受信しているところ。


珍しい故障の5800(2015年1月17日)

10年ほど前に入手しましたが、その時より、SW1〜3で受信ができません。(MWFMは正常です)
た、ダイアルフィルムに少々ズレがあります。
さらにラジオを逆さまにすると、ロッドアンテナが出てきます。(ロックがされていない?)

入手時は、イアホンポケットに純正のイアホンが入っているなど外観はよかったのですが、鳴りませんでした。
そこで内部の清掃をすると(かなりホコリがたまっていました)一応、
MWFMは鳴りました。
掃除の際に、
BAND SERECTの機構も掃除しましたので、何かを傷つけたのかもわかりません。
アンテナが抜け落ちる件は 確かに緩いので 別の5800から金具を移植しました。
これで正常になりました。
ただ 取り外した金具をよく見ると 誰かが接着剤を塗って加工しようとした形跡があります。
これが原因だった可能性が高いです。

受信できない原因は不明でしたが AM回路のトランジスターを6個全部交換しました。
悪いものだけ交換する方法もあるのですが、トランジスターも気まぐれで 極端に言うと返送中に悪くなる事も有り得るのでいやらしいのです。
手間がかかりますが 局発 混合 AMのIF関連のものをすべて交換することにしました。
まだ同じようなトランジスターが残っていますが 全数を交換するのも大変なので この辺が妥協点です。

これで調整して終わりです。
SWも会長に受信するので これで良しとしたのですが、慣らし運転をしてみるとSW2の受信が変です。
トランジスターを交換する前にも同じ現象が発生していたのですが、自然回復していました。


どれ位悪いかというと 感度が極端に悪いのです。
多分SW1 とSW3に比べれば10000分の1以下と思われます。
最初はバンド切り替えスイッチの接触不良と思ったのですが、バンド切り替えスイッチを操作しても回復しません。
不思議なことに電気的ショックを与えると回復することが有るのです・・・。
単純な断線ではないようです、非常に珍しいです。

いろいろ調べた結果 SW2のアンテナコイルの不良と判明しました。


不良コイルと 交換用のコイル
(別の5800から移植します)

アンテナコイルを抜き取った基板面の画像
完全に組み立て後だったので また基板レベルまで分解しなくてはいけません とほほ・・。



アンテナコイルを組み込んだ基板面の画像




今回の修理で交換した部品。



下に 5800の新品アンテナの画像を示します。
アンテナの途中にはめられているのが今回の交換品の金具です。



修理後3月で帰ってきた5800

FMの受信がおかしくなったということで 5800が帰ってきました。
現象から見て FM専用受信回路が壊れたと想像し、2001Dでモニターすると猛烈な雑音が出ます。
5800の受信周波数の10.7MHz下側の周波数です。
正常であれば キャリヤーだけなので受信はしますが、無音です。
これで間違いなく局発のTR不良と判明しました。



FMの局発TRは基板の裏からみて 下図の丸印の位置に組み込まれています。
交換して 修理完了です。


取り外したTRも示しておきました。

実は前回AM局発兼FM IF用の2SC710とIF回路のTR 合計3個を交換したのですが、
全数交換するのは勿体無いので この部分は交換しなかったのです。
TRの不良になる原因は通電によるものと想像されますので、普通はこの部分は壊れにくいのですが、
FM中心に使われていることも有り、壊れたのでしょう。

ただこれで終わらせるか、残りのトランジスターも交換するか悩ましいところです。
5800の修理をした時 サンプル的にトランジスターを抜き出し 足の状態を見て 危険と思えば IF回路の6個全数を交換するようにしています。
前回は 3個交換して 大丈夫と思ったのですが、見当違いでした。

しかし この時不良が見つかってもFM専用部分までは交換しませんので 今回の現象は防げなかったでしょう。
最近はトランジスターの値段が@150円以上になったようで、需要と供給の関係とはいえ困ったことです。
トランジスターは昔 各種 100個単位で購入したものが 沢山有りますが・・、永久にとはゆかないので・・。
選択の幅を広げるべく 検討中です。
下記の画像のように 基板にソケットを組み込み どのトランジスターが適合するか思索中です。

どこまで交換するか悩ましいところです。
理想を言えば 全部交換したいところです。



今回交換したトランジスターです。
これで BFO用を除いて 全て(出力用も含め)交換したことになります。
前回2SC710を3個と出力用TR 2個合計5個交換しています。
全部で16個のうち15個を交換した事になります。

不良だったものを除いて 劣化品はありませんでした、脚が黒くなっているのを除けば、
外見的にはすぐ壊れる可能性は低そうな感じでしたが これだけはよく解りません。




5800などソニーのラジオは時限爆弾を抱えているようなもので たくさん使われているトランジスターが突如 壊れます。
雑音が出るようになるのは良い方で 突然無音になったりします、非常に悩ましいです。

今回は2回めなので 思い切って交換しましたが、率直に言って これだけ交換するのは大変でした。
ミスがあると動作しないので 慎重に確認してゆきます。
作業ミスの発生も考えると どうするか悩ましいところです。
安易に真似をしないほうが良いと思います。

5800のトランジスター

5800には悪名高い2SC710が9本 その他のTRが7個使われています。
2SC710以外のTRも製造方法も基本的には同じなので 壊れる確率はほぼ同じと考えてよいでしょう。


下記基板は実験用基板です。
ICやTRを抜き取り ソケットに加工されている部分があります。

○の部分は2SC710。
□の部分は出力とランジスター 電界効果トランジスター 2SC1364 や 2SC633など。



依頼主の話と違う5800の修理(2013年8月16日)

修理歴は無いという 5800です。
症状は以下の通りです。
1.10分ほど使用していると急に聞こえなくなる(電源が落ちている・・・乾電池の液漏れの影響かも知れません)
2.ロッドアンテナがホップアップしない(これは購入してしばらくしてから割れた部品がラジオの中から出てきたと記憶してます) 
通電してみると 確かにSメーターの振れが落ちてきます。
しかし 電源が切れるほどではありません。
現象としては トランジスター不良とそっくりです。

基板とシャーシ部分を分解した処です。
どうもトランジスターを交換した形跡があります。

最近は 持ち主が修理歴が無いというBCLラジオで改造されているものが多いので、注意深くなっています。 段々 疑い深くなって・・、困ったことです。



パターン面の画像です。
注意深く見るとトランジスターの足が短く切られていません。
ソニーサービスの修理票もありません、素人が修理したようです。



下記画像は一例ですが 長いまま残されています。



念のため 2カ所 取り外してみましたが 足は新品同様です。
どうも 比較的最近交換されたようです。
取りはずしたTR 
(全く同じTRが使われている 見事です)
 
 以前交換した古いTR
(この5800のものではありません)
 
実は 数日 あちこち調べたのですが、解決しませんでした。
液漏れの影響も考えて スイッチを交換してみたり フイルター付IFTを交換したのですが 解決しません。
普通の5800の修理の数倍の手間がかかってしまいました。
BCLラジオの修理は1週間以内が原則ですから 時間をこれ以上かけても 勿体ないし、手持ちの基板と交換して修理することにしました。
落ち着いたときに 原因の追究をしたいと思います。




アンテナのPOP UPが壊れたというので この対策もしました。
破損した部品が出てきたとは言われていたのですが、実際は部品が取り除かれていました。
破損しただけではありませんでした、壊してあったのです。
これも記憶違いかもしれません。






普通 POP UPが出来なくなるのは 右側の黒いプラスチックが破損することが多いのです。
白い部品は無理に取り外さないと 取り外せません。
バネも同様です。
自然には外れないのです。



ケースに組み込もうとしたのですが、どうも様子が変です。
スピーカーの取り付けかたが逆になっています。
スピーカーも取り外したようです、どうも怪しい限りです。


スピーカーのリード線は左側から取り出すのが正常です。
180度回転して 組み込んであるので 違和感があります。
さらに基板の部品に端子が接触する恐れもあります。
途中で 電源が落ちたという現象はあるいはこれが原因かもしれません。
スピーカーは正規の方法で組み込まなくてはいけません。

スピーカーを表から見ると 埃が溜まっているので どの方向に取り付けられたかすぐ分かります。
埃の付き方で 最近変更したことが判ります。
これらを総合すると 素人が 最近(数年以内に)弄り回したもののようです。
素人修理の後始末は大変なので 事前に教えていただかないと困ります。
いかにも素人工作らしい場合は解りやすいのですが、今回のように見事に工作してあると見分けがつきません。
非常に悩ましいのです。


  下側のエッジに 埃が溜まっている。
  昔の修理だったら 上側(間違って取り付けた時の下側相当)にも埃が無いとおかしい。





2013年8月16日


長期間放置されていたソニー スカイセンサー5800の修理(2013年9月12日)

長期間 故障で放置されていた5800の修理です。
大昔 部品が無いということで修理を断られたそうです。
何時の日か修理ができると信じて保管していたとのこと。
ただ すごい汚れ方です、洗剤を付けて2回ほど洗いましたが、完全には汚れが落ちませんでした。





残念ながら 電池の液漏れの影響で +極まで錆びて使えなくなっています。
−側の錆びるのは良くあるのですが・・。



故障の原因はTRの不良でした、本当に使えなくなっていたのは2個だけですが6個交換しました。
これで今後 故障する割合が減るでしょう。



ダイアルが硬いので 分解して メカの軸に注油しました、ただギアの部分までは分解していません。
この部分を分解すると スローにした時にも軽くなります。



電池金具の+側は手持ちの金属板を切断して作りました。



アンテナも先端が折れていたので キャップを被せました。





2013年9月12日:295
2014年6月18日1,492
2014年6月20日:1,640
2015年1月17日:2,284
2016年5月8日:3,486
2017年3月6日:4,308
2017年11月1日:4,757
2018年1月5日:5,245
2018年5月23日:5,849 2021年1月8日:8,710

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